精力剤とは肉体的・精神的な疲労の緩和を補助する、医療品や食品(サプリメント)のことです。
精力剤の中には、精力や性欲を増加を掲げているものがありますが、あくまでも精力剤は滋養強壮剤であり、基本的には慢性的な疲れを感じる時などに栄養補給を目的として使用されます。
しかし、ドラッグストアに陳列しているドリンク剤を見ると、「これで今日は元気バリバリだぜ!」という気持ちになりますよね?
では、どのような成分、効果があるかをいくつかご紹介致しましょう。
・スッポン
スッポンの歴史は長く、中国において4000年前ほど前から記録が残っています。日本においても江戸時代中期ごろからすでに食べられていました。
スッポンは主に南アフリカ以外の熱帯地域に生息する、比較的甲羅がやわらかいというのが特徴の水性のカメの一種です。
「噛みつく」というイメージがあるスッポンですが、実はかなり臆病な生き物なんです。
ちょっとの物音にも敏感で、少しでも人間の気配がすると水の中から上がってきません。
しかし、スッポンには歯がないのですが、あごの力が強いので、一度かみつくとなかなか離しません。
これが「雷がなっても離さない」と言われる所以です。
スッポンは、人間の体の中では作れない必須アミノ酸、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ミネラル類が豊富です。
アミノ酸から作られるタンパク質は、体内で筋肉や酵素、ホルモンの材料になるため、滋養強壮の効果があります。
また、リノール酸も含まれていますが、これはコレステロール値や中性脂肪を抑える働きがあるといわれています。さらに!コラーゲンも豊富で、美容にもよいとされています。
スッポンは昔から「精がつく食べ物」として扱われてきました。ただし、これには科学的根拠がなく、伝統医学的な位置づけになると言えるでしょう。
疲労回復効果は期待できますが、直接的な性欲増強効果は期待できないところがあります。
・マムシ
夜行性の毒へびとして知られているマムシですが、5月頃から水田に出現し、10月頃まで活動します。
全長45~65㎝のマムシは、実はおとなしいへびなんですが、気づかずに踏むと噛みつきます。
水田わきなどでとぐろを巻いてじっとしているので、気がつかない場合がありますのでご注意くださいね。
繁殖は卵胎生(親の体内で卵がかえり、幼生(ようせい)の形で生み出されること)で、夏に交尾し、翌年の8~10月に2~15匹の幼へびを生みます。
中国では昔から滋養強壮や精力増強を目的とした漢方薬として広く利用されてきました。
特に、マムシの「胆のう」を乾燥させて粉末化した「蛇胆(じゃたん)」や、内臓と皮を取り除き乾燥、粉末化させた「反鼻(はんぴ)などが有名です。
「マウスのよじ登り実験」という面白い実験があります。
約60℃に加熱したホットプレートの上に50㎝のロープをつるし、ホットプレートの上にいるマウスにこのロープを登らせるといもので、登るスピードを観察したところ、マムシを服用していたマウスの方が服用していないマウスより早く登ったという結果がでたそうです。
明治以降、マムシを滋養強壮剤として用いることが増え、現在でも多くのドリンク剤に「ハンピチンキ」として配合されています。
マムシに含まれる「カルノシン」や「スペルミン」という栄養素は、性ホルモンを分泌を高める効果があるとされています。
また、9種類の必須アミノ酸をはじめ、20種すべてのアミノ酸、カルシウム、ビタミンE、ビタミンB6がバランスよく含まれています。
・高麗人参(朝鮮人参)
古くは二千年前の中国の文献でも紹介されているほど長い歴史を持つ高麗人参。
とりわけ希少価値が高く、時の皇帝たちは多くの人手を割いて山中を探させたといわれ、王侯貴族しか入手できない時代もあったほどです。
大航海時代には、高麗人参は海を渡り、フランスの思想家ルソーやロシアの文豪ゴーリキー、中国最初の皇帝・始皇帝をはじめ、歴史上の様々な著名人が常用したといわれています。
日本では、室町時代から輸入が始まりましたが、江戸時代には、健康マニアとしても知られる徳川家康が愛飲したという話もあります。
高麗人参はとりわけ徳川家と縁が深く、時代劇でお馴染みの8代将軍徳川吉宗が国内での栽培を広く奨励したことで、国産の高麗人参が出回るようになりました。逆に「水戸黄門」徳川光圀が栽培に失敗したというエピソードが広く知られています。
原産は中国、韓国、極東シベリアなどの極東になります。
高麗人参は、加工法によって「水参(すいじん)」「紅参(こうじん)」「白参(はくじん)」と呼び名が変化します。
「水参」は収穫した生の高麗人参のことです。
「白参」は、高麗人参の皮をはがした後、天日で自然乾燥したものをさします。
そして「紅参」は、皮をはがさず蒸した後、そのまま天日で自然乾燥させたものです。
高麗人参は皮に多くの成分が含まれているため「紅参」には、サポニンの種類や量、各種ビタミンなどの有用成分が多いことがわかっています。
さて、高麗人参の成分の中で特徴的なものが「ジンセノシド(パナキソシド)」と呼ばれるサポニンの一種で、肉体的・精神的疲労回復を促すと言われています。
韓国の延世大学の研究チームにが、90人のED患者に対して行った臨床実験では、高麗人参を与えられたグループは、硬直度・性欲・満足感ともに60%以上向上したと報告されています。
その理由の一つとして、高麗人参の飲用によって男性ホルモンが増加したことがあげられています。
・マカ
マカとは、南米・ペルーのアンデス山脈に生息する植物で、ブロッコリーやキャベツ、白菜、大根、わさびといったアブラナ科に分類される植物です。
カブのような見た目をしています。
古くから、「アンデスの女王」と呼ばれるほど、ミネラル、アミノ酸などの多くの栄養が含まれており、栄養価が高く、滋養強壮、活力増強栄養補給など様々な目的で摂取されています。
栄養価が高い理由は、マカは、土壌の成分を丸ごと吸収するからです。ですので、連作ができません。
マカには栄養価の高さ以外に、特有の成分である「ベンジルグルコシノレート」が今、注目されています。
「ベンジルグルコシノレート」は不調や老化の原因である「活性酸素」を吸収してくれる「ファイトケミカルス」という成分です。
アンデス山脈の厳しい気候の中で育った植物だからこそ、我が身を守るため、生き抜く力として生み出されたのでしょう。
日本では、1990年にペルーからマカの種を持ち帰り、約20年の歳月をかけ、栽培に成功しました。
では、効能をみていきましょう。マカは、男性の生殖機能や性欲の向上、EDの改善などの効果が期待されています。 マカの主成分であるアルギニンには、成長ホルモンの分泌を促す作用があり、精子の形成をサポートします。また、マカに含まれるカラシ油配糖体という成分には、勃起機能を改善させる作用があると言われています。
具体的には、マカを服用すると、体内で一酸化窒素という物質が生成されます。
男性が性的刺激を受けた場合、一酸化窒素のは働きで、陰茎の筋肉が緩み、海綿体へ流れる血流量が増加することで勃起に至るわけです。
副作用は特にありませんが、アブラナ科の野菜(ブロッコリー、キャベツ、白菜、カブ、大根、クレソン、ワサビなど)にアレルギーがある場合は注意しましょう。
また、生のマカは消化しにくいため、腹痛や下痢、嘔吐などの副作用がありますが、サプリメントなどから摂取する場合あまり気になさらなくてもよいでしょう。
ただし、取り過ぎると下痢などの不調の原因になることがあります。
・トンカットアリ
トンカットアリとは、インドネシアやマレーシアの低地森林に主に自生する植物です。
別名「マレーシア人参」、日本では「ナガエカサ」と呼ばれています。成長が非常に遅いことが特徴で、15㎝成長するまでに10年かかるといわれています。
※公開できる写真がありません・・・
マレーシアなど東南アジアでは、古来より解熱剤、マラリア治療および胃病等の民間薬として用いられてきました。
マレーシア国立マレー大学生化学部教授がトンカットアリの成分を抽出することに成功し、この10年ほどで一気に商品化され、サプリメントとして出まわるようになりました。
主成分は、グリコサポニン、ユリペプチド、カシノイド、アルカロイド、ステロール、テルペノイドです。
効果としては、高麗人参の5倍も高い効果をもつとされていますが、疲労回復、免疫力の向上、男性機能の強化といった「活性」に、あくまでもサプリメントのレベルで影響を与えると報告されています。
特に、男性機能に対する効果は、マウスを用いた実験で論文が報告されており、ある大学の生化学研究では、トンカットアリを1週間服用した後では、精巣で作られる男性ホルモンのテストステロンが480%増加するという結果が報告されています。
ただし、これはあくまで人間を対象とした臨床実験で有意差が得られたわけではありませんので、ご注意ください。
・ムイラプアマ
ムイラプアマは、ボロボロノキ科の反寄生低木で、ブラジルのアマゾンが原産です。アマゾン河流域に自生するハーブです。
別名「紫イペ」とも言われているそうです。
男性の活力維持に効果があると言われています。
特に、昼も夜も元気を出したい男性や、疲れやすい方、ストレスを感じやすい方などに人気があります。
現地では、樹皮を胃腸を強くするお茶として、また、樹皮や根から採ったエキスをマッサージ薬や入浴剤として使用されてきました。
ED改善効果や性欲増進効果については、古い研究では調べられていますが、バイアグラをはじめとするED治療薬の登場により、その効果は影を潜めてしまいました。
ムイラプアマに含まれる成分は、「クマリン(ポリフェノールの一種)」「ムイラプアミン(精力アップメインの成分)」「アルカロイド(男性ホルモンの活性化)」です。
ムイラプアマの根は医薬品扱いになりますので、医師の処方箋がなくては入手することができません。
一方、根以外の他の部分は特定の成分を含まないため、食用として使用することができます。
ムイラプアマは、医薬品のような即効性はありません。基本的には飲み続けることが効果的だと言えます。
副作用としては、過剰摂取で肝臓を傷めてしまう可能性があります。まれですが、吐き気、消化不良といった症状もあります。
心臓、高血圧、血管系の治療薬を服用されている方は使用前に医師にご相談ください。
ここまで長い間お読みいただきありがとうございました。
意外と知らない精力剤候補があったのではないでしょうか。
ドラックストアなどで見かけたら、思い出してみてください。
著:相徳かおり
合わせて読みたい!
ED治療と漢方薬について