EDの治療に漢方薬は効果があるのでしょうか

ED治療の際、漢方薬を併用して治療を行う場合があります。
ただし、直接的な治療の手段としては使用されませんが、身体全体的な健康を促進するための選択肢として併用されることがあります。

■西洋医学と東洋医学の違いとは?

 現在、世界で繰り広げられている医療には、大きく分けて「西洋医学」と「東洋医学」があります。

簡単に区別すると、西洋医学は、病気や症状の原因を薬や手術などで取り除くことを主体とした医学。
一方で、東洋医学は、身体の内側から体質を改善し、びょうきの予防や改善を目指す医学です。
東洋医学は古代中国で発展し、日本にも広く普及しています。その一つが「漢方薬」です。
伝統中国医学では、生殖機能は五臓(伝統中国医学で人間の内臓全体を言い表す時に用いられる言葉で、「肝」「心」「脾」「肺」「腎」を指します)の「腎」に含まれます。

腎の機能は、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精(せい)を貯蔵し、人の成長・発育・生殖ならびに水液や骨をつかさどることとされています。

 漢方の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」によると、男性の生殖機能は8年周期で変化します。

そこには、例えば16歳で射精ができるようになって子どもが作れるようになり、24歳で腎気が強くなり、32歳で充実する、とあります。
そして、腎気は40歳で弱り始め、56歳で衰え、64歳になると腎がつかさどる歯や髪も抜け落ちるとあります。
 今の時代には合わないところもありますが、何千年もの前の考え方が今でも参考になりますね。

漢方薬は、市販もされていますので、どのように選べばよいかをお伝え致しますね。

漢方薬を使う前に自分のタイプ「証」を見極める

漢方薬を服用する前に気をつける大事なことがあります。
それが「証(しょう)」です。「証」というのは、自分の身体がどういうタイプかを表したもので、この「証」の違いによって同じ簡保薬でも効果が全く違うということがよくあります。
むしろ使ってはいけないという場合もあります。

漢方薬はメリットデメリットがあります。十分に理解して利用することが大切です。
虚証(きょしょう)実証(じっしょう)
  眼光に力がある 脈が充実している 体力がなくて弱々しい 細くて華奢 顔色が悪くて肌が荒れやすい 細くて小さな声 胃腸が弱くて下痢をしやすい 寒がり  眼光に力がない 気力がない・倦怠感 体力がある 筋肉質でがっちり 血色が良く肌ツヤがある 大きく太い声 胃腸が強くて便秘気味 暑がり

虚証の方向けの漢方薬

・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

 EDは、疲労や加齢などが原因で起こることがあります。そのような時に効果が期待できる漢方薬です。疲労が溜まった身体を元気にさせて、身体に必要なエネルギーを回復し、倦怠感やストレスを緩和することで、EDの改善に期待ができるとされています。

〔副作用〕

皮膚の発疹、発赤、かゆみ

・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

 桂枝湯(けいしとう)に竜骨(シカやゾウ、ウシ等の哺乳動物の化石化した骨で、主成分は炭酸カルシウムです)と牡蛎(牡蠣)という生薬を加えたものです。カルシウムをはじめとしたミネラル類が精神を落ち着かせてくれます。桂枝湯と合わせることで心身を温めて緊張を解きほぐしてくれます。

〔副作用〕

皮膚の発疹、発赤、かゆみ

実証の方向けの漢方薬

柴加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

 漢方薬の向精神薬とも呼ばれ、ストレスによる不安感が強い場合や不眠などの症状があるEDに用いられます。ただし、特に下痢気味な人は症状が悪化する可能性があるので控えた方がいいでしょう。妻から排卵日を伝えられて、プレッシャーを感じてEDになってしまうというのは妊娠を希望されるカップルの間では少なくない話です。そんなときにオススメです。桂枝加竜骨牡蛎湯のは虚証タイプの人向きですが、こちらは実証タイプの人向けになります。

〔副作用〕

皮膚の発疹、発赤、かゆみ

・四逆散(しぎゃくさん)

 四逆散は、柴加竜骨牡蛎湯と同じく、柴胡(さいこ)という生薬が含まれていて、精神的な不安を抑える効果があります。心因性のEDの方に処方されるようです。

〔副作用〕

・尿量が減少する、手足がひきつる、手がこわばる

・体がだるくて手足に力が入らない、手足がひきつる、手足がしびれる

虚証、実証を問わない漢方薬

・八味地黄丸(はちみじおうがん)

 東洋医学界のED治療薬の代表格です。特に、疲れやすさ、ダルさ、腰や足の冷え、しびれ、痛みなどを伴うEDに効果があると考えらています。8種類の生薬を用いて配合され、「地黄(じおう)」と呼ばれるものが主成分です。

 作用としては、勃起を鎮める働きをしている「PDE5」を阻害してくれます。

 このため、八味地黄丸以外にも「地黄」が含まれる「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」や「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」などもED改善効果があると報告があるようです。

〔注意点〕

・胃腸の弱い方、下痢しやすい方は服用を避けましょう

〔副作用〕

・皮膚の発疹、発赤、かゆみ

・食欲不振、胃部不快感、腹痛、下痢

・動機、のぼせ、唇・舌のしびれ

・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

 EDは、精神的な不安や緊張、ストレスが原因で起こる場合がありますが、そのような症状を和らげる働きがあります。胃腸の働きを正常化し、神経の働きを落ち着かせることで男性機能の改善につながる可能性があるとされています。

〔副作用〕

・皮膚の発疹、発赤、かゆみ

・体がだるい

通販で漢方薬を購入する時は

一般用漢方製剤(市販漢方薬)は、第2類医薬品に分類されていて、インターネット通販でも購入可能です。
ただし、通販での購入に際しては販売サイトの安全性にくれぐれもご注意ください。

インターネット上には販売許可を得ていない違法な販売サイトや、海外医薬品や偽造医薬品を販売しているサイトがあり、健康被害や消費者トラブルが多発しています。

自治体の許可を得ている販売サイトは、下記の厚生労働省のページに記載されていますので、購入しようとしているサイトが登録されているか確認しましょう。

※参考:厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/hanbailist/index.html

それぞれの漢方薬の世界的なエビデンスは存在しません。
ですが、西洋で使われていないので、データがないのは仕方がないところでしょう。

日本国内での効果があったという報告は多くあるようですので、選択肢の一つとして使うのも良いのではないでしょうか?
使用される際は十分にリスクと副作用を理解してご利用ください。
ご不安な方は漢方薬の専門家にご相談されるといいかもしれません。

著:相徳かおり