脂質は、体になくてはならない栄養素の1つです。血液中に含まれる脂質を血中脂質といい、主なものはコレステロールと中性脂肪です。コレステロールは細胞膜を構成する成分で、また、ホルモンや胆汁酸などの原料にもなっています。
中性脂肪は、脂肪組織に蓄えられてエネルギー貯蔵庫としての役目や、皮下脂肪となって体温の保持、衝撃から守るクッションの役目をはたしています。通常、血中脂質は一定の量に保たれるよう調節されていますが、体の中で脂質がうまく処理しきれなかったり、食事から摂る脂質が多すぎたりして血中脂質が基準値から外れる病気です。
「高脂血症」から2007年に「脂質異常症」と名称が改められました。
脂質の異常には、
① LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)
② HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)
③ 中性脂肪(トリグリセライド)
④ Non-HDLコレステロール(総コレステロールからHDLコレステロールを除いたもの)
の血中濃度の異常があります。
LDLコレステロール | 120~139mg/dl | 境界型高LDLコレステロール血症 |
140mg/dl以上 | 高LDLコレステロール血症 | |
HDLコレステロール | 40mg/dl未満 | 低コレステロール血症 |
中性脂肪(トリグリセライド) | 150mg/dl以上 (空腹時採血) | 高トリグリセライド血症 |
175mg/dl以上 (随時採血) | ||
Non-HDLコレステロール | 150~169mg/dl | 境界型Non-HDLコレステロール血症 |
170mg/dl以上 | 高Non-HDLコレステロール血症 |
コレステロールの「善玉」と「悪玉」とは?
LDLコレステロールには、肝臓に蓄えられたコレステロールを全身へ運ぶ働きがあります。また、HDLコレステロールは、余分なコレステロールを全身から回収し、肝臓へ戻す働きがあります。
HDLコレステロールは動脈硬化を進行させないように働く一方で、LDLコレステロールは増えすぎると血管壁にたまり、「アテローム硬化」というタイプの動脈硬化を勧めることから、HDLコレステロールは「善玉コレステロール」、LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」と呼ばれています。
脂質異常症がなぜ体に悪いのか?
脂質異常症そのものには、自覚症状がなく、痛くもかゆくもありません。しかーーし!血中のLDLコレステロールが高い状態で血管の内側の細胞(内皮細胞)に傷がつくと、損傷した部位からLDLコレステロールが入り込みやすくなります。
内皮細胞と血管壁の間に進入したLDLコレステロールは、やがて「酸化LDL」に変化します。
酸化LDLは血管壁を傷つけるため、本来のしなやかな動きができない血管になっていきます。
さらに、免疫細胞(マクロファージ)は酸化LDLを異物と判断して捕食します。
捕食後、動けなくなった免疫細胞の残骸がどろどろした「プラーク」と呼ばれる物質になり、血管壁にたい積するのです。
この反応が繰り返されると、動脈硬化が発生します。
動脈硬化によって、動脈の柔軟性が失われると、血液の流れに合わせてスムーズに動脈が収縮できなくなり、高血圧の原因になったり、血栓で血管がつまったり、血流に耐えきれず動脈が破裂することもあります。
脂質異常症とED
動脈硬化が発生すると、細い血管はいち早くその機能が落ちます。血管の太さを比較すると、
内径動脈(首あたりの動脈) | 直径約5~6㎜ |
冠動脈(心臓の動脈) | 直径約3~4㎜ |
陰茎動脈 | 直径1~2㎜ |
陰茎の動脈は細い細い血管です。症状がないからといって長年放置しておくと知らず知らずのうちに動脈硬化が進行し、「勃ちが悪くなった…」となっていくわけです。
脂質異常症にならないために(すでになっている方もそれ以上悪くならないために)
〈食事編〉
① 肉より魚、大豆製品を多く摂る
青魚には豊富な不飽和脂肪酸の「EPA」や「DHA」は「食後の血中中性脂肪が上昇しにくい食品」として特定保健栄養食品にもなっているほど高い効果が期待できます。
また、大豆に含まれるタンパク質と食物繊維には、コレステロールを下げる作用があり、納豆には、「ナットウキナーゼ」という血栓を溶かす作用のある酵素が含まれています。
② 野菜・海藻、キノコを毎食摂る
野菜はビタミン・ミネラル食物繊維が豊富で、抗酸化力が高く、動脈硬化を防ぐ作用があります。特に、ピーマンやにんじんなど色の濃い野菜(緑黄色野菜)は、ビタミンA・C・Eやポリフェノールなどが多く、強力な抗酸化力を持っています。
キャベツや大根など色の薄い野菜(淡色野菜)はビタミンCが豊富です。
③ 食事で摂る油の「量」に注意し「室」の良いものを選ぶ
質の悪い油とは、動物性脂肪(バター、ラード、バラ肉、ベーコン、肉の脂身)やトランス
脂肪酸(マーガリン、ショートニング)です。
質の悪い油を過剰摂取すると、LDL(悪玉)コレステロールが増加し、HDL(善玉)コレステロールが減少するため、動脈硬化のリスクが高まります。
質の良い油とは、不飽和脂肪酸を多く含むオリーブ油、亜麻仁油、しそ油、エゴマ油などで、血中の中性脂肪やコレステロール値を調整する働きがあると言われています。
肉は脂身の少ない部位(ヒレやももなど)を選ぶか、脂身はなるべく残すようにしましょう。
調理の際は、油で揚げるのは避け、焼く、湯通しする、蒸すなど油を使わない方法を工夫してみましょう。
〈運動編〉
より多くの酸素を使って、より多くの脂肪の燃焼を図ることができる「有酸素運動」が良いとされています。
◎有酸素運動の例
・ウォーキング
・速歩き
・水中歩行
・サイクリング
・ラジオ体操
・段差昇降(20cm程度の高さ)
・水泳 など
できるだけ毎日の運動が理想的ですが、週3日以上で1週間の合計が180分以上になるようにしましょう。時間が無い場合は、1日10分でも多く歩く、階段を上り下りするなどの運動を心がけましょう。
自分の体力や運動能力と相談して、いきなりハードな運動を行うことは避け、無理なく続けることのできる運動を選びましょうね。
いつまでもしなやかな血管でいるために、日常生活を見直してみましょう!
有酸素運動は自宅でできます!
YouTubeより 有酸素運動+自宅
著:相徳かおり
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