「もう知ってるよ」という方も多いかもしれませんが、ここで「勃起とは?」を確認したいと思います。
男性の陰茎が性的興奮や性的刺激で大きく硬くなる現象を勃起(ぼっき)といいます。
勃起は一見すると、単純で動物的な現象のように思えますが、そのメカニズムは意外に複雑です。


神経や血管がきちんと連動して働くことが、勃起には必要となります。
端的に言うと、「陰茎内にある『海綿体』というスポンジ状の器官に多量の血液が流れ込むことで起きる」ことです。

より具体的には、

1. 性的興奮を感じる
2. 脳から神経を通って勃起の指令を伝達する
3. 平滑筋(血管の壁を構成する筋肉)がゆるみ多量の血液が流入する
4. 陰茎海綿体内に血液が流れ込み勃起が発生する

勃起の過程は、まず、性的刺激や性的興奮から始まります。視覚、触覚、聴覚、性的思考などが性的刺激となり、脳に信号を送ります。平滑筋が緩んで、海綿体に血液が流れることで勃起する際、平滑筋を緩ませ、硬くする役割をしているのが「シクリックグアノシンモノリン酸(cGMP)」という物質です。


その一方で、この「cGMP」という物質を分解する「PDE5」という酵素も存在し、「PDE5」は勃起を鎮める働きをしています。
つまり、性的な興奮や刺激で、脳から命令され、cGMPが増えて、平滑筋が緩むと勃起が起こり、PDE5酵素が優勢になるとcGMPが分解され、勃起が収束に向かいます。

余談ですが、ご経験がある方も多いと思います。無意識的に勃起することもありますよね。
勃起は、乳幼児期からみられる現象で、おむつを替える際や入浴などの際に乳幼児の陰茎が勃起することがあります。
乳幼児の勃起は、手が触れたり、着衣を脱ぐ際に擦れたり、冷たい空気に触れるなどの物理的な刺激に対する反射によって起こります。
大人になっても、そういった物理的な刺激に対して反射的に勃起してしまうことがあります。
これが無意識的な勃起に繋がります。

さて、ここからは、少し詳しく解説していますので、ご興味のある方はご一読ください。(本当に勃起というのは複雑でデリケートなんです。男性の方々、すごいです!)

① 血管系について
海綿体に向かう動脈は、「総腸骨動脈」→「内腸骨動脈」→「総陰茎動脈」と続き、さらに「総員頸動脈」から「海綿体動脈」と「陰茎背動脈」に続いています。
逆に、陰茎海綿体から戻る静脈は、陰茎背側へ「深陰茎背静脈」→「前立腺静脈叢」(叢とは血管の集まりのことです)へ行くルートと、内陰部静脈へ行くルートが存在します。

② 神経系
陰茎の知覚(陰茎背神経)や運動(座骨海綿体筋・球海綿体筋)をつかさどるのは、陰部神経になります。仙随から出ている骨盤神経(副交感神経)は勃起に関わっていて、胸腰随から出る下腹神経(交感神経)は勃起を鎮めることに関わっています。
骨盤神経と下腹神経が骨盤神経叢から一緒になって海綿体神経となって陰茎に到達します。副交感神経終末の非アドレナリン・非コリン(NANC)神経から一酸化窒素が出て、平滑筋を緩ませ勃起を起こします。

また、コリン神経のアセチルコリンとNANC神経の神経伝達物質である「VIP」が陰茎の内皮細胞に作用し、一酸化窒素を介して平滑筋を緩ませ、エンドセリンという物質を介して平滑筋を収縮させます。

また、交感神経終末からノルエピネフリンという物質が出て平滑筋を収縮させて勃起を終わらせます。
(交感神経とは、仕事や運動など活動しているときに働く神経で、緊張、ストレスを感じたときも活発化します。逆に副交感神経とは、体がリラックスし落ち着いた時に優位に働く神経のことです)

引用:2005年「陰茎海綿体の解剖と勃起のメカニズム」東邦大学医学部泌尿器科学講座 永尾光一氏